ローマの中心、ナヴォーナ広場とカンポ・ディ・フィオリ広場からほど近いキエザ・ヌオーヴォの愛称で呼ばれているサンタ・マリア・イン・ヴァリチェッラ教会。

昨日4月4日の朝、この教会に泥棒が入って、ポンペオ・バトーニの「サクロ・クオーレ・ディ・ジェズ(イエスの聖なる心)」の絵を盗んだ、つもりだったのですが、実は、複製画を盗んでいった、という間抜けな事件がありました。

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ボンペオ・バトーニは、18世紀にロココスタイルの優美なスタイルの絵を描いたイタリア人画家です。このイエスキリストも、一見、女性のような優雅な描き方ですね。

日本ではあまり有名ではありませんが、代表的なものとして、ボルゲーゼ美術館の「聖母子」、エルミタージュ美術館の「聖家族」、ベルリン美術館の「クピドとプシュケの結婚」などがある一流の画家。

この「サクロ・クオーレ・デル・ジェズ」も、価値が推定不可能という貴重な絵画ですが、この教会に在ったのは、実は19世紀の画家ピエトロ・ガリアルディが描いた複製のほうだったのです。

幸いなことに、ボンペオ・バトーニが描い本物は、ヴェネツィア広場に近い「ジェズ教会」に飾られているのですが、恐らくこのことを知らない犯人グループによる犯行だったのでは、と言われています。

教会から絵画を盗み出すなんて、大変なことのような気がしますが、警備がほとんどない普通の教会では、意外と簡単なのでしょうか?それにしても複製だったなんて、ご苦労なことです。

それにしても、このキエザ・ヌオーヴォの複製と聞いて、すぐに思いうかべるのがカラヴァッジオです。

カラヴァッジオの代表作のひとつとして有名な「キリストの降架」。

息絶えたキリストを、十字架から降ろす瞬間を描いたドラマチックな作品です。リアルに描かれたキリストの肉体にライトがあたり、背景の闇とのコントラストが印象的です。そして、背後の両手を挙げた女性の動きが、この絵に奥行きを与えて、臨場感を醸し出しています。

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この作品は、当初、サンタ・マリア・イン・ヴァリチェッラ教会の所蔵作品でした。ところがナポレオンのイタリア侵攻のあと、イタリアの多くの芸術作品と一緒に持ち去られ、パリのナポレオン美術館を飾ることになったという悲しいストーリーです。

ローマにあったカラヴァッジオの絵画の中で、唯一持ち去られたというのも、まさに不運。傑作ゆえの際何なのですが・・・

その後、教会側の要請によって、1816年に無事ローマに戻ってくることができたのですが、サンタ・マリア・イン・ヴァリチェッラ教会には、二度と戻ることはなかったのです。

どこに行ったかと言うと、ヴァチカン美術館。今度はローマ法王のコレクションとして、持ち去られてしまったのです。教会って一体・・・って思っちゃいますね。

サンタ・マリア・イン。ヴァリチェッラ教会は、まるで、せめてもの嫌がらせのように、本物そっくりの「キリストの降架」の複製を飾っています。

便利な場所にあるので、お時間のある方はぜひ行ってみてください。

ちなみにこのサンタ・マリア・イン・ヴァリチェッラ教会の祭壇には、フランダースの犬で有名なルーベンスの絵画があります!「聖母子と聖グレゴリオ一世、聖マウロ、聖パピア、聖女ドミティッラ、聖ネレオと聖アキーレ」。ローマにあるルーベンスの傑作とも言われるお宝で、正真正銘の本物ですよ。

こういう傑作を、無料で拝めるのがローマのいいところです!

サンタ・マリア・イン・ヴァリチェッラ教会(Chiesa di Santa Maria in Vallicella)
住所:Via del Governo Vecchio 134(教会の入り口は、コルソ・ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世通り側)
開館時間:7時30分~12時、16時30分~19時15分