ここ数日、テレビのニュースはアンネの日記で有名なアンネフランクの話題で持ちきりです。
サッカーのラツィオチームのサポーターが、ライバルであるASローマのユニフォームを着たアンネフランクの写真をシールにして配布したことに対して、ローマのユダヤコミュニティが人種差別、人種迫害として大抗議。
SSラツィオの会長が、ローマのシナゴーグ(ユダヤ教の教会)へ謝罪しに行き、昨日のサッカーの試合では、試合の前に、選手が「アンネの日記」にサインをするというパフォーマンスまで披露されました。我が家の中学生は、この夏、学校の宿題の読書が「アンネの日記」で、夏じゅう「この本はおもしろくないから読めない」と文句を言い続けていたので、なじみが深い本です。
日本人である私たちには、理解しにくい事件ですが、迫害の歴史の中で生き延びてきたユダヤ人たちにとって、少しでも差別につながることには、すぐに反応するのです。
ローマには、ユダヤ人居住区であるゲットーがあります。ヨーロッパで一番古いゲットーで、紀元前2世紀にまで歴史をさかのぼります。ユダヤが古代ローマ帝国によって壊滅させられると、多くのユダヤ人がローマへ移り住みました。
ところが、1550年になると、反ユダヤ主義のローマ法王パオロ4世によって、カンピドーリオからティベリーナ島までユダヤ人の居住区が制限され、夕方になると鍵が閉められ出入りが禁じられるようになりました。ちなみ、システィーナ礼拝堂のミケランジェロの最後の審判に裸体が多く描かれているとして、画家たちに腰巻のようなものを上から描かせたのは、この法王です。
続くローマ法王たちも、同様の政策を取ったので、19世紀になっても、ヨーロッパに残る最後のゲットーとなり、フェルザン・オズぺテク監督の映画「向かいの窓」にも出てくる1943年の事件の舞台ともなったのです。よかったら、ぜひ見てみてください。イタリアを代表する歌手ジョルジアGIORGIAの歌う主題歌「Gocce di Memoria」(思い出のしずく)も、とても印象的です。
現在、ローマのゲットーは、古代と中世、ルネサンスが入り混じる興味深い地区として、観光客の訪れる場所となっていますが、テヴェレ川に面して、ユダヤ人の宗教と文化、教育をつかさどるシナゴーグがあり、ユダヤ人のコミュニティの中心として機能しています。
イタリア統一後、1901年から1904年にかけて建設されたので、まだ新しい(イタリア的には)シナゴーグですが、ローマの大神殿(IL TEMPIO MAGGIORE DI ROMA)という名称で、1階は、ユダヤ博物館が併設されていて、そこから見学が可能です。近くには、ユダヤ料理のレストランなどもあり、興味深い地区です。
Museo Ebraico di Roma(ローマのユダヤ博物館)
住所Lungotevere di Cenci
開館時間;日~木10時から17時(4月から9月は18時まで)、金曜日10時から14時(4月から9月は16時まで)
入場料:11ユーロ
